読書ブログ 「iPS細胞」を読みました
気持ちのいい時期になってきました。
読書の秋というわけでもありませんが、
以前読んでイマイチ理解できていなかった「iPS細胞」という本を読み直しています。
テレビや新聞で時折目にするiPS細胞のニュース。
iPS細胞って何なの?という興味から手にとった本書ですが、
購入当初は、専門的な内容を理解できなかったこともあり、最後まで読み通せてはいなかったなー
なんとなく読み返したくなった今日この頃でした。
『iPS細胞』 山中さんエピソード サイエンティストとは、
まず引き込まれたのは、山中さんのエピソード。
「ジャマナカ」とよばれて挫折を味わった臨床医時代。
研究の分野へと移っても恵まれた研究環境ではなかった若手時代。
引き込まれるエピソード盛りだくさんです。
気になった部分を抜粋すると、以下のようになります。
どのような人かを理解する上でも、山中伸弥のケースは興味を引く。
四〇歳近くまで、特別に恵まれた研究室にいたわけではない。外国に留学したくてもコネがなく、募集案内に四〇回以上応募しても返事ももらえなかった。まとまった仕事をして、やる気に満ちて帰国しても、ポジションがない。やっとつかんだ職を足がかりに彼の才能は一気に開花し、それまでの努力が報われた。一流の研究所で、有名教授の下、恵まれた環境で研究をし、教授の推薦で留学をし、よい職に就く、といった研究者が多いなか、山中の経歴には力強さを感じる。(ー章)
臨床で挫折した若い医師が、就職難の中でわずかな幸運をつかみ、最先端の技術を身につけ、誰も考えたことのない仮説を立て、予想もできないような細胞を作り、そしてノーベル賞をとるという、サクセスストーリーである。
引用元:中公新書 黒木登志夫 著 iPS細胞
『iPS細胞』 iPS細胞が見つかるまで HowどのようにしてiPS細胞を作ったのか
iPS細胞はどうやって作りだしたのか?
誰も考えつかなかった「最終段階まで分化した細胞が、初期化されて受精直後の未分化の細胞にまで戻る」というアイディアはどんな発見の過程があったのか?
ワクワクする発見の過程を本書ではわかりやすい表現で解説してくれています。
気になった部分を抜粋すると、以下のようになります。
【最初にデータベース作り】体細胞からのリプログラミングの実験を始めるにあたって、山中は、初期胚、ES細胞で発現している遺伝子を大きく網にかける作戦をとった。彼は、ES細胞で発現している遺伝子のデータベースを作るところから始めた。
二○○四年には、ES細胞で発現している重要な遺伝子を二四種までしぼり込んだ。山中は、この二四の遺伝子の中に、体細胞を初期化するような遺伝子があるかもしれないと予測した。
【切れ味のよいスマートな方法】実験者としてみた場合、山中のすごいところは、初期化を見るために、切れ味の鋭いスマートな方法を考案したことである。
まず、Fbx15遺伝子に薬剤(ネオマイシン)耐性遺伝子をつなぎ、ゲノムに挿入する。そのマウスから線維芽細胞を分離し、初期化候補遺伝子を導入する。薬剤存在下で生き残った細胞があれば、それはFbx15を発現している細胞、つまり初期化細胞あるいはそれに近い細胞ということになる。初期化しなかった細胞は、Fbx15遺伝子を発現していないため薬剤により死んでしまうので、シャーレの中には初期化細胞だけがコロニーを作るというわけである(図3-5)。このような方法により、低い頻度でできてくるであろう初期化細胞を定量的に検出することができるようになった。
山中は二十四候補の中に、初期化を起こす因子がすべて含まれているほど自分の運が良いとは思っていなかった。二十四候補では不十分で、一万種類以上からなるライブラリーをスクリーニングする必要があると考えていたのだ。
実験を担当していた大学院生の高橋は、まず練習として、二四の遺伝子をひとまとめに、上記の初期化を検出できるマウスの細胞に感染させたところ、なんと、ES細胞と似た細胞ができてきた。高橋から報告を受けた時、山中は、何かの間違いだろうと思った。大発見だ! と大喜びしたことが、よく調べると間違いであり、奈落の底に突き落とされた過去の経験が脳裏をよぎった。しかし、実験を繰り返しても、同じようにES細胞によく似た細胞が出てきた。どうやら、山中と高橋に大きな幸運が転がり込んできたようであった。
引用元:中公新書 黒木登志夫 著 iPS細胞
まとめ
「幸運はよく準備された人にのみまわってくる」
専門用語もあり、理解しずらい部分もあるけれども、
ワクワクしながら本書を読み進めています。
”iPS細胞の発見には幸運もついていた”と著者は語っています。
そこで紹介された、
「幸運はよく準備された人にのみまわってくる」
という格言は刺さりました。
地道に一歩一歩ですね。